理由

昨日、1ミリも信用できないと思った理由。
2007年の仕事納めの日、彼女は元気がなかった。深く傷ついて心を閉ざしていた。普段は朗らかで、どんな辛いことや理不尽なことがあっても自身で消化できる強さも持っている。そんな彼女のことをみんな慕っている。もちろん、私も大好きだし、たおやかさ、芯の強さに憧れさえ抱いている。だけど彼女だって人間だ。心がどうにもならないことだってある。彼女の周りの空気がピリピリしていた。
終業のチャイムが鳴って納会。みんながわいわいしている中、彼女は時間が過ぎるのを耐えているように一人お酒を飲んでいた。私はどうしてもそばにいたかった。彼女がいつもみんなにしてくれているように、ただ普通にそばにいたかった。
ぽつりぽつりと何でもない話。彼女は少しだけ心をほぐしてくれた。最後には笑ってバイバイできた。何に傷ついたかなんて聞く必要はなかった。笑えただけで充分だった。
あの子はずっと知らないふりだった。それは、そばにいるという私のやり方があるように、あの子なりのやり方、優しさだと思っていた。見守る、という。
だけどそうじゃなかった。
2008年、仕事初めの後の新年会、程なく酔っ払ったあの子は、私に聞いてきた。「あの日、あの時、彼女は私の悪口言ってなかった?」と。その瞬間、私はあの子に対する信用を捨てた。軽蔑さえした。そして、傷ついた。
あの子は見守っていたのではなく、ただ保身のためだけに様子を伺っていたのだ。
あの子には、何か思い当たるふしがあったのだろう。人間だもの、あって当然だと思う。
だけど、あの日の彼女は自分を見失ってしまいそうな心を涙をこらえて、じっと静かに耐えていたのだ。こんなに仲がいいのに、そんな彼女を心配できないの?上辺だけでもいいから彼女の心に目を向けて、それから自分のことを切り出せないの?と思った。
その言葉の直前まで、私はあの子のことを仲間だと思っていた。だけど私は、あの子に腹を割って話すことはもう一生ないだろう。