おわりとはじまりの季節の雨は冷たかった。
きょう、東京の母ともいえる上司が定年退職をむかえた。
第二の人生がさらに明るく輝いたものになれるよう、明るく笑って送りたかったのに、溢れ出る涙を止めることができなかった。
子供を持たない彼女は、実の娘のように静かにじっと見守っていてくれた。
仕事の壁にぶち当たったり、人間関係に悩んだり、失恋をしたりして自分を見失いそうになったとき、彼女は言葉ではなく身体すべてで包んでくれた。
彼女と出逢ったことで、私は生きていく芯のようなものを自分の中でつくり出せたように思う。
ママ(彼女のことはずっとこう呼んでいた)の娘として恥じぬよう、どんな人生を送ろうとも毎日をしっかりと自分の足で踏みしめて行こう。
それが今の私のささやかな目標。そして今までも、これからも、ママからもらったたくさんのことに答えられる、たった一つの方法。