じりじり照りつける朝の陽射しをからだいっぱいに浴びながら、決まった時間に自転車を漕ぐ生活が始まった8月。さながら夏の子供のよう。
今週はまた、夏休み。ひとりだったりふたりだったり、遅くまでお酒を飲んで怠惰な朝を過ごしている。

生の果物は苦手なはずなのだけど、ジュースを作った残りを冷え冷えにして朝食べるのに夢中になっている。
昨日の夜、だらだら飲みながら、床にごろんと寝転びながら読んだ本。

ぬるい眠り (新潮文庫)

ぬるい眠り (新潮文庫)

「とろとろ」の中の

信二は、ときどき私を、自分がひどく無能で愚かな、とるに足らない存在であるという気持ちにさせる。空の高い校庭の片隅で、私は自分をとても恥じた。

このくだりでどきりとした。
このあいだ、好きな人とふたりでサマーソニックに行った。
続く音楽に汗をかきながら踊ったり、冷えた床を慈しむようにふたりで寝転んで酔った体を休ませたり、懐かしい友人や過去の恋人と偶然の再会を喜びあったり。
体はとても疲れたけれど、とても満たされた幸せな時間だった。
ふたりでビーチに出て、海を見ることができて嬉しい、と思ったとき、ほんの一瞬、「とろとろ」のような気持ちになったことがぐぐっと蘇ってきた。
嬉しい、幸せ、と切ない、寂しいはいつだって紙一重で。彼に限らず、その危ういバランスを、嬉しい、幸せにより大きく傾けさせてくれる人たちに囲まれていることを、とても幸せに思う。
足にさらさらとまとわりつく砂、地平線まで見える海、空に吸い込まれていく大音量、そして右隣には好きな人。
完璧な風景の中にはいつも、誰にもあげないひとりだけの気持ちが混じっていて、その気持ちをひっくるめて思い出として残しているのです。


嵐が過ぎ去ったあとの、なんとも風通しのいいいちにち。
朝にはハートを食べる。
夜にはゴーヤを揚げたのとひじきと大豆を入れたエスニックな炒めごはん、と長い缶のビールいっぽん。
このあいだ友人が「家でビールを飲んでいて一本で溺れた」と言っていて、この男の子は面白い表現をするなあと思ったと同時にその光景がとても掴みやすく、くすくすと小さく笑ったのであったけど、今日の夜はまさに溺れたといった感じで、いつのまにやら飲み干し、食べ干し、ベッドに転がっているという有り様。
当然のごとく変な時間に目覚めたけど、妙なくらい体と意識はすっきりとしていて、外にゴミを出しにいった。
夜が明けてきた。

サマーソルジャー

いつも、夏は、暑さにまかせて過ごしている。
冬のつんとした寒さも時には好きになるけれど、寒さに身をまかせることは決してしない、できない。
この溶けるよな熱気と、じりじり射す陽射しは、いつもいつも心地いいとは限らないけれど、特別な何か、だ、私には。
今年の夏は、まいにちゆっくりとじっくりと過ぎ去っていく。
煙草を吸う回数が驚くほど少なくなって、なくてはならないものが1つ減ってなんだか随分身軽になった。
週に一度くらい、2日酔いになって泥のように眠っている。
時どき思い出したように掃除をする。エタノールとミント油とローズマリー油をほんの少し混ぜた水で、汗をぽたぽた落としながら夢中になって床に雑巾をかける。
もずくと茄子とゴーヤとひじき。手をかえ品をかえ、毎日といっていいほど食べている。時どき無性に餃子が食べたくなる。そんなときは友人に電話をかける。
時どき歩いて、時どき走って、時どき本を読んで、時どき音楽に体を揺らし、時どき買い物をして、時どき丁寧にお化粧をしてお気に入りの服を着て出かける。
そしていつもの夏と同じようにひとつ歳をかさねた。
今年の夏はゆっくりじっくりと、いつもどおりの夏をくりかえしていく。

こないだの、あつく晴れた日、用事ついでにずっと行きたかった小石川植物園まで足を伸ばした。仕事に行っていなくてもお弁当の習慣はずっと続いていて、近所の公園は行きつくしたので。
そこは


都会なのに静かで、涼しくて、蝶々がたくさん舞っていて、ここはまるでアワーミュージックの世界のようだ、と思った。

アワーミュージック [DVD]

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私は、気狂いよりも、勝手によりも、男と女よりも、ゴダールの映画の中でこれをいちばん愛している。


ひっそりとキャンドルナイト
小雨が降っていたので窓を閉めた。
部屋の中はサーキュレーターが回る音と、人工的に起こった風に揺られる炎、その2つの存在だけが生きているよう。
ひそやかな夏の夜のはじまり。

お休みにふわふわと浮かれていた時期が過ぎ、早起きを心がけつつ、マイペースで過ごしている今日この頃。ドラマティックなことなんてちっとも起こらない、変わり映えしない毎日だけど、なんだかとてもいい気分。
夏の真っ白いカーテンに換えて、少し模様替えをした小さな部屋で本を読んだり居眠りしたり甘いものを食べたり。陽射しが落ち着く頃には外に出て公園のベンチに座ったりいっぱい歩いたり。電車に乗る用事がある時には、おまけで買い物したり久々の街まで足を伸ばして案の定迷ってみたり。
大きかったり小さかったり、今まで過ごしてきた時間にいつも抱えていた焦燥のようなもの、が嘘のように気づいたらなくなっていて、それを時どきふと思い出して不思議な気分になったり。
きっと、こんな気分は全ての歯車が合わさった今だけだから、あと少しだけ、こんな贅沢で我侭な毎日を楽しもうと思う。

見終わった:2008(031,032,033,034)

殯の森 [DVD]

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「殯」の意味をはじめて知りました。森の隅々にまで沁みこむくらいの深い深い愛が、真千子さんの叫びが、胸に響きました。
ジョン・レノンを撃った男 [DVD]

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理由なんてなかったのかもしれない、と思う。
エディット・ピアフ~愛の讃歌~ (2枚組)

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あまりにも正直でまっすぐで迷いがない、炎のような歩み。見ている間、ずっと胸が竦んで辛くて仕方がなかった。全てをさらけ出せるほどの情熱が、羨ましいのかもしれない。だから、胸が震えたのかのしれない。遅ればせながら。お・も・し・ろ・い!スケールがここまで大きいと無心で楽しめていいなあ。早速続編も予約リストに入れました。